遺骨の処分方法について
- 2023年01月20日
お葬式手配の「よりそうお葬式」
経済的理由から墓を買うことができなかったり、墓じまいした場合だったりと理由はさまざまですが、遺骨の行く先に苦慮している人達が増えてきています。親族の葬儀を検討している人の中にも遺骨の処分方法について悩んでいる人もいるでしょう。
喪主として責任を持って遺骨を処分するためには知っておかないといけない法律や決まりがいくつもあります。
粉骨処理、散骨、自然葬、海洋散骨、それらの方法を紹介すると共に、注意点も説明します。
遺骨を処分しなければいけないケース
納骨堂が骨壺でいっぱいになってそれ以上入らない場合や、跡継ぎのいない墓を墓じまいした場合など、遺骨を処分しなければいけないケースはいろいろあります。
そういったケースをもう少し具体的に見ながら、遺骨の処分方法について考えていきましょう。
納骨堂に入らないケース
納骨堂に入らないという状況は、長年その納骨堂を利用していたならば十分にあり得ることです。
骨壷のサイズは9種類ありますが、一般的に使用される骨壺は、全サイズの中でも大きいほうである7寸(直径21.7cm、高さ25.5cm)です。
納骨堂に何人分の骨壺を置くことが可能なのかということは、購入した納骨堂のサイズなどによって異なります。しかし、7寸のサイズの骨壺を10も20も置けることはまずありません。
納骨堂に骨壺がもう入らないケースは、それほど珍しいことではなく一般的なことなので安心してください。
ただ費用をかけずに対応するとなると、それほど選択肢は多くありません。
新たにより一層大きな納骨堂を購入できないという人には、遺骨の粉骨代行サービスの利用をおすすめします。
粉骨代行業者は日本中にいくつもあります。粉骨して粉末化した遺骨は、個人差はあるものの容量で5分の1くらいにまで小さくなるのです。そうすれば7寸よりも小さな骨壺に納め直すことが可能です。
ちなみに粉骨した後は、小さな骨壺に移し替える方法だけでなく、複数の遺骨を1つの骨壺に納める方法もあります。
特に五十回忌を終えた遺骨などの場合は一度検討してみてはいかがでしょうか。
墓じまいをするケース
少子化や核家族化が進む中、墓を継ぐ人がいないことや、遠すぎて墓参りに行けないことなどを理由に、墓じまいをする人は増えてきています。
また、将来的に継承者不在で無縁墓になることを心配して早めに墓じまいをする人もいます。
墓じまいをするケースと一口に言っても状況はさまざまです。
所有していた墓を撤去した場合、当然遺骨の処分を考えなければなりません。
墓じまいをしたのはいいが、いったい遺骨をどこに持っていけばいいのだろうか?と悩む人も少なくないでしょう。
墓じまいをした後の遺骨の処分方法はいろいろあります。 一般墓、樹木葬、納骨堂、合葬墓、といったお墓に改葬する方法、海に散骨する方法があります。 次世代へ継ぐ必要のない合祀墓や散骨を選ばれるケースも少なくありません。
お墓や寺院より納骨を拒否されるケース
核家族化が進み、田舎に菩提寺があるものの、都心で亡くなるという状況もよく見られます。
先祖代々の墓のある寺院の近くで亡くなれば、自然とその菩提寺に葬儀を依頼して戒名をつけてもらうこととなり、納骨を拒否されることはありません。
しかし、都心で亡くなった故人の葬儀を、菩提寺ではない寺に依頼した場合は問題になることが多いでしょう。
檀家は宗教儀礼に関して菩提寺の宗派の作法に従う必要があります。
菩提寺がありながら、菩提寺に何の相談もせず、都心にあった近くの寺に葬儀を頼んだのが問題となるのです。
こうした場合、菩提寺の僧侶から納骨を拒否されて、再び葬儀を行うように言われたり、戒名のつけ直しをするように要求されることもあるでしょう。
寺院から納骨を拒否されるトラブルを避けるためには、亡くなった人の葬儀を行う際、菩提寺に連絡をするのが重要となります。しかし、もうすでに菩提寺以外の寺で葬儀を終えてしまった場合は、再び葬儀を行うか、遺骨を何らかの方法で処分するしかありません。
葬儀を行うといっても、本堂での法要形式となりますから、葬儀社への支払いが発生するわけではありませんが、お布施の経済的負担は伴います。 しかし納骨を拒否されたからといって、遺骨の行き先がなくなるわけではありませんし、今後も寺院との付き合いは継続するわけですから、丁寧に事情を説明して納骨ができるように交渉することをおすすめします。
遺骨の処分方法
墓を建てる費用は平均でも100万円から200万円ほどであり、まして都心では墓地が少ないため墓地の値段が上がっています。
さらには墓石の種類などによってはもっとかかることもあるでしょう。
新しく墓を建てるためには多額のお金が必要になります。
高齢化社会となり、病気の治療費や老人ホーム代などで経済的に大きな負担をかかえている人も少なくありません。
こうした社会的状況などを踏まえ、遺骨の処分に関わるビジネスが拡大しています。
遺骨の処分を請け負う業者や自分で遺骨の処分を行う方法などを見ていきましょう。
自分で粉骨処理をし散骨を行う
遺骨の処分をする費用をほとんど持ち合わせていない人が選べる方法は、非常に限られています。
この自分で粉骨処理をし散骨を行うという方法は最も費用がかかりません。
散骨をするのに粉骨処理をしなければいけないという法律はありませんが、海への散骨について細かく粉骨にすることがガイドラインで推奨されています。また、遺骨をそのまま撒くことで誤解が生じ、最悪の場合、遺棄事件に発展するかもしれないので注意が必要です。
まず骨壺の中から遺骨を取り出し、こぼれないようにビニール袋に入れます。
ビニール袋は後でハンマーで叩くことになるのでできる限り厚手の物が望ましいでしょう。
ビニール袋に入れたら今度はタオルなどを巻いて緩衝材の代わりとし、ビニール袋が破れないようにします。
そして金槌などで叩いて細かく砕いていきます。なお、骨壺は砕いてゴミとして出すことができます。
また、散骨する際は遺骨を一片2mm以下の粉末状になっていなければなりませんので、最終的にはすり鉢やごますり器などを使用していくことになります。
粉末状になった遺骨であれば、私有地や海上などに散骨できます。公園や公道に撒くことはできず、また私有地でも土をかけて埋めてはいけません。ただ、個人で粉骨を行うのは精神的に難しかったり、作業場所や洗浄など衛生上などの問題もありますので、粉骨は業者に依頼することをおすすめします。
粉骨代行業者に委託した場合は1万円ほどかかるところが多いです、
火葬場で焼き切り処分をしてもらう
火葬場では、基本的に遺族に遺骨を引き取ってもらうように対応していますが、遺骨をすべて引き取ってくれる火葬場もあります。
いきなり当日に「遺骨の受け取り拒否」をしても対応できないことがありますので、あらかじめ遺骨や遺灰を受け取らないということを希望する旨を伝えておいた方が良いでしょう。
他には市役所の担当部署に問い合わせ、火葬場の予約を取り、火葬を申請して火葬許可書を手に入れる必要があります。
あとは火葬場が適切に処理してくれるので、遺骨の処分に困ることはありません。
費用は火葬場ごとに違いますが、一般的に数万円のところが多いようです。
散骨代行業者に依頼する
散骨代行業者に依頼する方法は、多少費用はかかりますが、手間がかからないのがポイントです。
費用がかかると言っても墓を建てることなどに比べれば安く済みます。料金は散骨代行業者によって違います。
散骨代行を依頼するのに必要な物は遺骨だけではありません。
遺骨の他に、火葬埋葬許可証と依頼者の身分証のコピーが必要です。
散骨代行サービスは主に海に散骨してくれます。
そのため海が荒れる冬場などはすぐに散骨をしてもらうことができない可能性もあります。
土葬・樹木葬などの自然葬を行う
火葬が主流となっている現代の日本では、遺体を焼却せずそのまま土に埋葬する土葬は一般的ではありません。
しかし日本の墓地でも土葬が可能なところもあります。土葬の風習が残っている地域もありますし、地方自治体が土葬を禁止していないところもあるのです。
ただ都市部では土葬を断る墓地は多いです。
火葬に比べると少々難しい埋葬方法だと言えるでしょう。
土葬のメリットは、環境にやさしい点と土に還ることができるという点です。
逆にデメリットとして挙げられるのは、狭い日本で土地を多く使う土葬は不向きな点と、衛生的な観点から見てあまり好ましく思われない点です。
そういった事情のため地方自治体が条例で禁じている場合も少なくありません。
樹木葬は、墓石の代わりに樹木を墓標とします。
遺骨を自然とひとつにするという意味では、散骨と同じに感じるかもしれません。ですが、樹木葬は墓地として許可を得ている場所に埋めるという点が違います。
区画を墓のように購入しますが、墓を建てるよりは費用を抑えることができるでしょう。
遺骨のままか、粉骨した状態かによって値段が変わることもあります。
スペースを取らず土に還りやすい粉骨の方が料金が安くなります。
海洋散骨を行う
海洋散骨は、海洋散骨を代行してくれる業者などに頼むか、自分で行うか選ぶことができます。
海洋散骨代行サービスを行っている業者では、粉骨から海洋散骨まで引き受けてくれるところがあります。
海洋散骨を行う場所が東京湾なのか沖縄の海なのかで値段が変わりますが、墓を建てたり樹木葬を行うよりは安く済むでしょう。
また、自分で行う場合は、場所に注意しましょう。海岸線ならどこでもいいというわけではなく、節度の観点から海水浴場などは避けなければなりません。
もし沖に海洋散骨したい場合は、業者に頼むか、フェリーなどに乗って途中で散骨すると良いでしょう。
遺骨の処分に関わる法律
遺骨遺棄罪
刑法190条には次のように規定が置かれています。
つまり遺骨は、遺体と同じ扱いになっているのです。
遺体を遺棄したら罪になるのと同じく、遺骨を遺棄しても罪となります。それが遺骨遺棄罪です。
例えば、殺害した遺体を焼却して山中に捨てるような場合だけでなく、わざと適切に遺骨を処分しなかったというだけの場合も処罰の対象となる可能性があるのです。
ちなみに領得とは他人の物を不法に得ることを言います。
遺骨も、遺体と同様に刑法190条で規定されているということには注意が必要です。
墓埋法第4条
墓埋法とは略称であり正式名称は「墓地、埋葬等に関する法律」です。
その第4条には以下のように記されています。
2 火葬は、火葬場以外の施設でこれを行つてはならない。」
2に記された「火葬は許可された火葬場でしかできません」という意味は特に問題ないでしょう。
ですが「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない」という一文に引っかかりを覚える人もいるかもしれません。
墓埋法は墓地以外のところに遺体の埋葬(土葬)や焼骨を埋蔵してはいけないと規定しています。散骨は埋めるわけではありません。そのため墓埋法には抵触していないと解釈されています。
散骨について墓埋法が何も定めていないのは、墓埋法が作られた昭和23年頃はまだ散骨が今ほど一般的ではなかったためと言われています。では遺骨遺棄罪には触れるのではないかと考える人もいるかもしれませんが、それも問題ありません。
法務省が非公式ですが「散骨が節度を持って行われる限り、死体遺棄には当たらない」という意味の見解を述べたとされるためです。
埋葬許可証
墓に遺骨を埋葬する際、埋葬許可証は必ず必要です。
法律上、自分の所有する墓であろうと、勝手に遺骨を埋葬することは許されません。
自治体に死亡届、死亡診断書を提出すると埋火葬許可証が渡されます。 これは埋葬(土葬)もしくは火葬を行っても良いという許可証です。 この埋火葬許可証に火葬されたことを証明する火葬場の印が押されますので、骨壺と一緒に保管しておきましょう。
許可証は納骨する寺院の住職などに提出します。
埋葬許可証を紛失してしまうと有料で再発行してもらわないといけません。大切に保管しておきましょう。
まとめ
遺骨を処分しなければならないケースは、多死社会を迎えつつあるため、これから徐々に増えていくことでしょう。
ニーズが増える一方で、散骨代行業者や自然葬など遺骨の処分方法も広がりを見せつつあります。
墓を購入するのに比べれば費用を抑えられるものの、それでも高いと感じる人のために、自分で粉骨処理をして散骨を行ったり、そもそも火葬場で遺骨を残さないように焼き切り処分をしてもらったりという方法もあります。
遺骨遺棄罪などに触れないように、適切な遺骨の処分方法を選ぶことが大切です。
お葬式手配の「よりそうお葬式」
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監修者のコメント
岩田 昌幸 一般社団法人 葬送儀礼マナー普及協会
現在、行き場のない遺骨や家に置きっぱなしになっている遺骨が全国に100万柱程度あると言われています。遺骨は遺棄することが禁じられているほか、他人の土地に埋めたりすることはできません。墓地として認められた場所でないと納骨できないので、お墓を購入するタイミングがなくそのまま放置というケースも見受けられます。