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律宗は、中国で始まったとされる仏教の宗派の1つで、日本には奈良時代に伝えられました。
日本の場合、律宗のお寺の数は限られているため、この宗派の葬儀に出席する機会はほとんどないかもしれません。
ただ、真言宗などの律宗と関係が深い仏教の宗派もあることから、予備知識として律宗の詳細を知っておくと、何かと役立つことがでてきます。
ここでは、律宗にどのような特徴があるのかについて具体的にチェックしていきましょう。
律宗が日本に入ってきたのは、天平勝宝の時代と言われています。
当初は東大寺に戒壇が設けられ、聖武天皇や称徳天皇が戒律の教えを受けました。
律宗は、中国で始まった大乗仏教の教えを踏襲している宗派です。
中国を中心に広まった大乗仏教は、天台宗や浄土宗を始め、日本で普及しているさまざまな仏教の宗派のベースになっています。
四分律という戒律を守っている点は、律宗ならではの大きな特徴です。
四分律は60巻からなる仏教の戒律聖典で、日常生活の中で修行僧が守るべき規則を定めたものです。
内容を4つに分類してまとめていることから、四分律と呼ばれています。
律宗の本山は、奈良県にある唐招提寺です。
ユネスコの世界遺産にも指定されている唐招提寺は、律宗を日本にもたらした鑑真が戒律の研究に没頭した寺として知られています。
ちなみに、鑑真はこの寺で晩年を過ごしました。この寺の金堂や講堂はとくに有名で、御影堂には鑑真の彫刻が保存されています。
また、唐招提寺の境内には、鑑真の墓である鑑真廟も残っています。
律宗を日本に伝えたのは、唐の僧侶であった鑑真です。
このような経歴を持つ鑑真は、天平勝宝の時代に日本に渡ります。
鑑真はそれまでもたびたび日本への渡航を試みていましたが、嵐などに遭い、帰還を余儀なくされています。
鑑真が日本への渡航を考える1つのきっかけになったのが、中国に渡っていた日本の僧との出会いです。
日本の僧である普照や栄叡は、当時の中国である唐に渡っていました。
このような僧からの勧めを受け、鑑真は日本での布教を考え始めます。
当時の天皇であった聖武天皇が伝戒師となる僧を探していたこともあり、鑑真は弟子とともに日本に渡る決意を固めるようになりました。
数回の渡航の失敗を経て、天平勝宝5年に鑑真は九州の太宰府にたどり着きます。
翌年には、奈良の平城京に到着し、聖武天皇から保護を受けて東大寺を中心に、上皇や僧たちに戒律を授ける授戒という儀式を行うようになります。
その後、鑑真は唐招提寺を建立し戒壇を設けることになりました。
薬草の知識を日本に伝えるなど、鑑真はさまざまな面で功績を残した僧としても知られています。
律宗の教義には、他の仏教の宗派とは少し異なる特徴があります。
ここでは、律宗の教義ならではの特徴をご紹介してみましょう。
律宗の教義の特徴としては、律が中心になっている点が挙げられます。
修行僧が守るべき規範や罰則などを定めた律は、律宗の教義の中ではとくに重要と考えられており、修行においても律を実践し研究をすることが1つの課題になっています。
止悪、作善、回向衆生という3つの戒は三聚浄戒(さんじゅじょうかい)と呼ばれており、律宗の教義のベースになっているものです。
ちなみに、この三聚浄戒は、摂津義戒、摂善法戒、摂衆生戒から成り立っています。
悪を捨て去り、戒律を全て守って悪事を避けるのが摂津義戒。
摂善法戒は、積極的に善法を守り、実践することです。
また、摂衆生戒は、人々を愛して利益をほどこそうとすること、が基本的な意味合いになっています。
三聚浄戒は大乗仏教の戒律の1つであり、仏教の他の宗派でも重んじられています。
ただ、具体的な解釈は宗派によって変わることがありますので、教義を理解するときには細かい部分の確認が必要になるでしょう。
中国で起こった律宗は、律の研究が重視されています。
実のところ、中国で律宗の僧になるためには、律を修める必要がありました。このような経緯から、中国では古くから律の研究が盛んに行われてきた歴史があります。東晋時代にさまざまな律部経典が中国に伝わり、律に関する研究が盛んになりました。ちなみにこの時代に中国で漢訳されたのが、以下のような経典です。
この中でもとくに律宗が重んじているのが、四分律です。
四分律に関する研究は北魏の法聡と慧光が重視したことで知られています。実際、四文律宗などは、四分律を重んじた法総によって開宗されたと言われています。
彼は、四分律の研究をことのほか重視しました。また、同じ北魏の僧である慧光も四分律の研究を重んじ、さらに律宗は隆盛を極めます。
その後、唐の時代には道宣が「四分律行事鈔」を記して戒律についての研究が大成されるようになりました。ちなみにこの道宣は、南山律宗を開いた僧です。
このほかにも、相部宗を開いた法励や東塔宗の祖である懐素も、四分律についての研究で成果を上げています。
中国では、こういった四分律だけでなく、十誦律や摩訶僧祇律などの経典もそれぞれ研究されてきた歴史があります。
律宗は、摂津義戒や摂善法戒、摂衆生戒などの三聚浄戒の戒律を守れば成仏できると考えます。
そのため、供養についての考え方も非常にシンプルです。
同じ仏教でも、宗派によって成仏についての考え方は少なからず変わります。
例えば、日蓮宗などでは、「南無妙法蓮華経」のお題目を唱えることで成仏ができるというのが教義の基本です。
また、浄土宗でも、念仏を唱えることが成仏をするためには重要と考えられています。
律宗は律が教義の基本であり、お釈迦様の教えである経などは他の宗派ほど重視されません。
ちなみに、律宗のような奈良仏教系と呼ばれる宗派には、次のような特徴があります。
奈良仏教系の1つである律宗は、学術的な研究を重視する傾向があり、葬儀を行わないのが1つの特徴です。
本山である唐招提寺にも檀家はなく、個人の葬儀は行っていません。
こういった律宗の家でお葬式をするときには、自宅や民間の葬祭場などを利用するか、もしくは他の宗派のお寺に頼んで葬儀を執り行うという方法があります。
戒律が重んじられる律宗には、具体的にどのようなルールがあるのでしょうか。
修行僧や信者が守らなければならないのが、例えば次のような戒律です。
律宗の五戒と呼ばれる戒律では、「酒を飲まないこと」や「色欲におぼれないこと」などの5つのルールが定められています。また、「昼を過ぎて食事をしないこと」、「豪華な布団で寝ないこと」なども戒律の1つです。
律宗の戒律は、このように日常生活に関するものが多く、修行僧や信者は厳しいルールにしたがって、生活することが求められています。
男性は250以上、女性は300以上の戒律がありますので、信仰を持っている方は、普段の生活の中でもさまざまなルールを意識しておかなければならなくなります。
律宗では、摂津義戒や摂善法戒、摂衆生戒の戒律を、行動と言葉と精神で実践することが悟りを得るための方法と考えられているため、具体的に定められた戒律を守ることが重要になってくるわけです。
僧が行う授戒の儀式も、このような戒律を守る意識を高めることが1つの目的です。
現代では生活上のルールも多少緩やかになっているようですが、他の宗派に比べて守らなければならない戒律が多い点は律宗の大きな特徴と言えるでしょう。
律宗は、南都六宗の1つに数えられています。
南都六宗は奈良時代に平城京を中心に栄えたとされている宗派であり、奈良仏教系とも呼ばれています。
南都六宗に該当するのが、以下の6つの宗派です。
この南都六宗の寺が多く集まっているのが、奈良時代に平城京が置かれていた奈良市です。
ちなみに、律宗の本山である唐招提寺も奈良市にあります。また、恵灌が開いた三論宗の寺にあたるのが、奈良市の大安寺や元興寺です。
三論宗は、同じ南都六宗の1つである華厳宗や真言宗にも影響を与えた宗派として知られています。
ちなみに、こちらの大安寺や元興寺は、成実宗の寺でもあります。
成実宗は、道蔵によって開かれました。道昭が開いた法相宗は、奈良市の興福寺や薬師寺が中心になっている宗派です。
唐に渡った道昭は、玄奘から法相宗について学びました。この道昭は、東大寺や興福寺を中心にした倶舎宗(くしゃしゅう)の開祖としても有名です。
大きな大仏があることで知られる東大寺は、良弁や審祥が開いた華厳宗の中心になる寺でもあり、南都六宗の拠点として重要な役割を果たしてきました。
南都六宗は、後に鎌倉仏教にも大きな影響を与えていきます。
これらの南都六宗の中で、現代まで受け継がれているのは律宗と法相宗、華厳宗の3つの宗派です。
律宗は、後に真言宗と結びつき真言律宗という新しい宗派が誕生します。
真言律宗は、日本国内では律宗そのものよりもポピュラーであり、奈良を中心に、いまなお根強く残っています。
真言宗は、平安時代の僧である空海が開いた宗派です。
空海は、鑑真によって律宗が伝えられた当時から四分律の経典よりも十誦律を重視するなど、鑑真とは戒律への考え方に違いがありました。
律宗が衰退する中、叡尊が奈良の西大寺を中心にした真言律宗を新たに開きます。
真言律宗では空海が支持した十誦律を重視していました。
真言律宗に関係のある寺は、奈良を始め、京都府や大阪府、愛媛県、熊本県などにも多く見られます。
律宗の寺は、明治時代に入ると真言宗の所轄になっていきます。
ちなみに、律宗の寺として独立して残っているのは、奈良市の唐招提寺と京都府の壬生寺です。
真言律宗は、真言宗の1派に数えられます。真言宗にはこのほかにも、東寺真言宗や大覚寺派などの多くの宗派があり、それぞれの宗派の本山は全国に点在しています。
真言宗の宗派の場合は、大日如来を本尊にしており、葬儀の際にも「南無大師遍照金剛」(なむたいしへんじょうこんごう)を唱えるのが特徴です。
ちなみに、この真言宗のお葬式では焼香を3回行うのがしきたりになっています。
仏教の葬儀の場合、焼香の回数は宗派によって変わることが少なくありません。焼香の仕方などは、ぜひ事前に確認しておきたいポイントになるでしょう。
律宗は学術的な研究を重んじる宗派というイメージがあり、詳しい教義の内容については余り知られていないのが現実です。
律宗は仏教の研究というよりもルールを重んじる宗派と言えますので、戒律が厳しいことはまず頭に入れておきましょう。
ただ、「三聚浄戒の戒律を守れば成仏できる」など、他の宗派と比べると教義の考え方自体はシンプルです。
その分、厳しい戒律を守る必要があるのが、この律宗の特徴です。
律宗について知りたいときには、本山である唐招提寺などを訪ねてみるのが1つの方法です。
鑑真の軌跡やこれまで行われてきた戒律の研究などに触れることで、教義への理解が深まる場合もあるでしょう。
南都六宗などの奈良仏教系の宗派の寺は檀家を持たないことが多いですが、情報を得る方法はいくつかあります。
例えば、こういった律宗と関係が深い真言律宗の寺を訪れることも、律宗の教義に触れる方法になるかもしれません。
実のところ、仏教にはさまざまな宗派がありますので、葬儀を行うときやお葬式に参列するときにはその都度教義の確認が必要です。
教義の違いがある程度分かっていれば、細かいルールの違いなども理解しやすくなるでしょう。葬儀のしきたりやマナーは地域によっても異なるケースがあり、広く情報を得ながら臨機応変に対応していくことが求められます。
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