家族が余命宣告されたらするべき準備と心構え
- 2023年03月30日
お葬式手配の「よりそうお葬式」
「余命宣告」を医師から告げられたとき、患者本人と家族が受けるショックはきわめて大きなものです。
仮に患者みずから余命を尋ねたとして、医師から実際に余命を聞かされて、すぐに受け入れられるかというと、そう簡単にはいかないでしょう。
余命宣告された患者本人は絶望で自暴自棄になるかもしれませんし、家族も不安とストレスで押しつぶされそうになるかもしれません。
それでも、患者本人も家族も、残された時間を大切にしながら「その時」に備え、さまざまな準備をしておかなければなりません。
この記事では、「余命宣告」の正しい意味や、家族が余命宣告されたときの心構え、事前に準備すべきことについて丁寧にご紹介します。
「余命宣告」の正しい意味とは
まずは余命宣告が何を意味するのか、余命が何を根拠に示されているのか、余命の正しい知識を押さえておきましょう。
余命宣告とは
余命とは、その人があとどれくらいの期間生きられるかの期待値のことで、余命宣告とは医師が患者に対して余命を告げることです。
命にかかわる病気でない限り、医師が余命宣告を行うことはありません。余命宣告は、がん患者などが深刻な状態に陥った時に行われます。
ただし、余命はあくまでも予測に過ぎず、医師が告げた余命がそのまま患者の寿命を指すとは限りません。たとえば「余命1年」と言われて1年以上生きる方もたくさんいる一方で、「余命1年」と言われながら、数ヵ月で息を引きとるケースもあります。
余命は統計上の中央値にすぎない
余命宣告を行う際に医師が参考にする数値が「生存期間中央値」です。
患者が罹患している同様の病気に対して、ある治療法を施すことによって、実際にどれくらいの人がどれくらいの期間生存していたかというデータを抽出して、患者の余命を予測するのです。
たとえば、大腸がんでステージ4だとして、これと同じ状況で同じ抗がん剤を投与した患者が100人いたとします。この100人の生存期間は人によってそれぞれ異なります。3か月の人も入れば、5年という人もいるでしょう。こうした異なる生存期間の短い人から長い人を順に並べていき、ちょうど半数の50人目の方が亡くなった期間が「生存期間中央値」です。
ここから分かるのは、余命はあくまでも統計データを参考にした予測でしかないということです。
余命を正確に予測することは難しい
余命宣告は正確に予測することは難しく、実際の生存日数とのズレが3分の1以内であれば「正しい」とされているほどです。
例えば実際の生存期間が120日だった場合、余命を80日~160日と予測していれば、「この余命予測は当たっている」とされるのだそうです。
カナダ発のがん治療や予防、研究に関する学術誌『Current Oncology』に掲載された論文では、余命予測が当たった(実際の生存日数とのズレが3分の1以内)割合は全体のわずか36%に留まったとしています。
がんの余命予測は、患者の病状や治療歴、年齢、性別、家族歴、生活環境など多くの要素に影響を受けます。一方で、がんの治療の進歩に伴い、新しい治療法や医療技術が開発されることで、余命を延ばすこともできます。
以上の理由から、がんの専門医であっても、余命を100%正確に予測することは困難であり、医師もあくまで目安として余命を告げているのです。
新たな治療法が見つかる可能性もある
余命宣告の期間とはあくまで統計上の中央値から算出した目安に過ぎず、余命の期間が長いほど誤差が大きくなり、短いほど誤差は小さいといわれています。
つまり、余命はあくまでも病気に罹った患者の生存率の平均値(生存期間中央値)で、患者本人が必ずその値に当てはまるものではありません。繰り返しになりますが、余命宣告されても、その期間がそのまま寿命になるというわけではないと理解することが大切です。
また、長く生命を維持している内に、医療の進歩によって新たな治療法が見つかる可能性もあります。容態が安定して長く元気でいられることもあるでしょう。余命宣告後の治療や生活をどうするかを、前向きに考えていきたいものです。
家族が余命宣告された時の心構え
家族が余命宣告を受けると、非常に辛い状況に直面することになります。そばにいる家族はどのような心構えでいればいいのかを、ともに考えていきましょう。
感情を無理に抑え込まないこと
余命宣告は大きなショックを私たちに与えます。
患者本人は耐え難い絶望から、悲鳴や落ち込みなど、さまざまな反応を示すことが予想されます。また、そばにいる家族も心理的動揺を押し殺して「私がしっかりしなくては」と気丈にふるまいがちです。
そのような自然に沸き上がる感情を無理に押し殺したり、隠したりせず、まずは自身の感情を受け止めて、気持ちが赴くままに表現しましょう。
ひとりで抱え込まずに家族と話し合うこと
余命宣告というとても大きな問題に対してひとりで向き合うのではなく、患者本人や家族みんなで話し合うことが大切です。持っていく場のない気持ちを共有でき、今後のケアプランを共に考えることが、心理的にも大きな支えとなってくれます。
がんについて正しく理解する
「がん=余命があとわずか」と決めつけずに、がんの知識について正しく理解しましょう。がん医療の進歩は目覚ましいものがあります。
また、あなたががんに関する知識や情報を正しく入手することが、患者にとってはとても心強く映ることでしょう。
患者の病状が具体的にどのような状態であるかを正確に理解することによって、接し方を考えることができます。
専門家に相談すること
余命宣告を受けて考えなければならないことは、がんの治療についてだけではありません。自身の身の回りのこと、死後のことなど、さまざまな事柄の不安が湧き出てきます。
医師や看護師はもちろんのこと、ソーシャルワーカー、社会福祉士など、さまざまな専門家に相談し、自身が抱える不安や疑問を訊ねてみることも重要です。
最終期の時間を大切に過ごすこと
余命宣告を受けた場合、その人との最期の大切な時間を共に過ごすことが大切です。あとから後悔することのないよう、患者となるべく多くの時間をとることで、患者の心も晴れやかになるでしょう。
自分自身のケアにも気を配ること
家族が余命宣告を受けると、そばにいる家族も心身を疲弊させてしまいます。
患者のケアに専念しすぎてしまい、自分自身のケアを怠ってしまうことで体調やメンタルを崩す人がたくさにます。適度に休息をとり、休日を作る。自分だけの時間に趣味や運動をするなど、自分自身をいたわる時間を作ることが必要です。
余命宣告されたら備えておくべきこと
ここまで、主に余命宣告を受けた時の心構えについてお伝えしてきましたが、余命が限られる中で、実務的なことにも備えておかなければなりません。
具体的には、保険、相続、葬儀などを含む「終活」と呼ばれる領域のものです。
患者が加入している保険をチェックし、保険会社へ連絡する
余命宣告されたら、患者が加入している保険会社へ連絡し、加入状況を確認しておきましょう。
生命保険会社の保険の中には、余命6ヶ月と患者が宣告された際、死亡保険金の一部を存命中に受け取ることができるサービスがあります。
▶リビングニーズ特約
「リビングニーズ特約」は、生命保険や医療保険で患者が余命6ヶ月以内と判断された際、死亡保険金の一部、または全額を存命中に受け取ることができるサービスです。
多くの保険各社が無料で設定するこの保障は、QOL(クオリティ・オブ・ライフ。残りの人生や生活の質のこと)を向上させるうえで非常に有効な金銭サポートです。
緩和ケアなどの治療法を受けるには多額の費用がかかりますし、生前に支払われた保険金は、葬儀費用に充てることもできます。
受け取れる保険金額は契約内容によりますが、多くの保険会社はリビングニーズ特約の金額を「3,000万円まで」としています。
▶リビングニーズ特約の注意点
リビングニーズ特約を使うと、受け取った金額分は死亡後に支払われません。また、保険料を払い終えていない場合は、患者が亡くなるまで毎月支払う必要があります。
この特約で受け取る保険金は非課税ですが、保険金を使い切る前に患者が亡くなった場合、残預金は患者の財産として相続税の課税対象になります。
▶指定代理請求とは
指定代理請求とは、被保険者(患者本人)が保険金を自ら請求できない特別な事情(被保険者が意思表示できないとき、または病名や余命を認識していないとき)の場合に、本人に代って代理人が保険金の請求や受け取りができる制度のことです。本人に余命を告知していない場合、指定代理請求人がリビング・ニーズ特約を利用して生前給付金を受け取ることができます。
気を付けなければならないのは、患者本人が余命のことや、保険金を生前に受け取ったことをあとから知った時、ショックやトラブルになる可能性があることです。
リビングニーズ特約は、医師から余命宣告された患者本人が利用するかどうかを選択するのが本筋です。余命宣告を患者に言わないままでいるのであれば、あえて特約を利用しないのもひとつの方法です。
余命宣告された患者の親戚や友人へ連絡する
家族が余命宣告されたら、患者にとって大切な人たちに連絡しておきましょう。
家族だけでなく、離れて住む子や孫、親戚、友人や知人などが会いに来てくれることは、患者本人にとって大きな心の支えとなります。
本人に余命を告げていない時の判断は慎重にならざるを得ません。それでも「この人には最期に会ってほしい」と思う人には、余命を告げていないことも含めて連絡したらよいでしょう。
連絡の際は、次の事柄を伝えます。
- 余命宣告を受けた患者の氏名
- 患者の病状について
- 連絡している人と患者本人との関係性
- 連絡している人の連絡先(名前、住所、電話番号)
- 入院先の病院の名称、病室、住所、電話番号
- 患者本人に対する余命宣告の有無
患者が入院している病院を伝えておくことで、お見舞いに来てもらったり、励ましの手紙などをいただけるかもしれません。こうした周囲からのサポートが、患者の心を大きく勇気づけてくれます。
相続の準備をする
相続は、患者本人と家族にとって重要なことです。死後の相続トラブルを避けるためにも、患者本人と家族で話し合って、財産について把握し、相続の方針を決めておきましょう。
▶相続の問題
被相続人(患者本人)が、家族に対する相続の配分を決めていなかったり、特定の人に偏った配分をすると、権利を持つ相続人同士でいさかいが起き、場合によっては訴訟問題に発展することもあります。
そんな事態を避けるために、まずは正確な財産を調査して、財産目録やエンディングノートなどに記しておきましょう。財産目録があるだけで、遺産相続がスムーズに進み、家族たちの負担が軽減されます。
その上で、必要であれば患者本人が遺言書を作成し、相続人となる家族たちにバランスよく遺産を配分しておくことをお勧めします。
▶財産の調査
誰もが納得いく遺産相続をするためには、まずは本人がどんな財産を持っているのかを、正確に把握しておかなければなりません。
財産には、プラスの財産(資産)とマイナスの財産(負債)があります。
<プラスの財産>
不動産、現金、預貯金、株式、保険、骨董品、貴金属など
<マイナスの財産>
借金、ローン、未払い家賃、滞納税など
まずは上記のように、財産の分類をして、そして個別に金額や、対応する金融機関や証券会社など、詳細な情報を記録していきましょう。
▶財産目録の作成
財産の調査が済んだら、これらを財産目録をまとめます。この目録は、相続税や財産分配の基礎資料に利用します。
財産目録に決まった書式はありません。Excelなどの表計算ソフトで自作しても構いませんし、目録代わりにエンディングノート内の財産目録表をを活用する人もいます。
財産目録の作成は法律で義務づけられていませんが、遺産の全体像が分かり、相続人への適正な分配や相続税申告の有無、相続税の納付額が明確になることから、相続の手続きをしなければならない家族たちにとって大きな助けとなります。
遺言書の作成
遺産相続の相続人や分配比率は法律で定められていますが、もしも、「誰にどれくらいの金額を相続したい」と、相続人や相続額を自身で決めておきたいのであれば、遺言書を作成します。
遺言書は、自作もできますが、より法的効力を高めたいのであれば、公正証書遺言にすることをおすすめします。本人の意思を確認しながら、公証人(※)が法律に従って遺言書を作成してくれます。
公正証書遺言を作成しておくと、家庭裁判所で検認の手続きを経る必要がなく、本人が亡くなって相続が開始すると、遺言書に書かれた内容をすみやかに遂行できます。
遺言書の原本は2通作成され、1通は公証役場に保管されるので、破棄、隠匿、改ざんなどの心配がありません。
ちなみに、公証人が出張して、病院や自宅での公正証書の作成も可能です。患者の体が思うように動かない場合も、思考力や判断力が維持されていれば、口述で遺言書を作成できます。作成費や出張費については、日本公証人連合会ホームページをご確認ください。
(※)公証人・・・公証事務を行う公務員です。判事や検事などを務めた法律の専門家で、法務大臣の任命で選任されます。
葬儀の準備をする
余命宣告をされたら、葬儀についても考えておく必要があります。
▶葬儀社の事前相談
余命の長短にもよりますが、患者本人や家族が葬儀社の事前相談を受けておくと、いざ葬儀を行うことになったときにあわてずに済みます。
また、比較的時間に余裕がある時だからこそ、複数の葬儀社とコンタクトをとり、予算やプラン、サービスの内容を比較でき、よりよい葬儀社と出会える可能性が増えます。
▶菩提寺がある場合はお寺にも連絡を
菩提寺がある場合は、余命宣告された旨を住職に伝えておいてもよいでしょう。いつ葬儀が発生するか分からないことを事前に伝えておくことで、いざという時の連絡もスムーズにいきます。
また、葬儀の内容や葬儀後の供養について、疑問に思うことがあれば事前に確認しておけます。
お寺に連絡するメリットは、心のケアをしてくれることです。病院の医師や看護師は、医療のプロでこそあるものの、やがてやって来る死や死別そのものに対してケアしてくれるわけではありません。
こうした死生観に関わる不安や疑問は、宗教者であるお寺だからこそ受け止めてもらえます。心の中に消化しきれない不安がある場合、まずはお寺に話を聴いてもらってもよいかもしれません。
エンディングノートについて
「残された時間の中で、家族に伝えたいことは何か?」
「本人に聞いておかなければならないことは何か?」
このような時に有効なのが、エンディングノートの活用です。
エンディングノートは、本人の想いや大切な情報を整理し、家族に伝え、共有しておくためのものです。余命宣告後のライフスタイルを充実させるだけでなく、残された家族が、相続や死後手続きや遺品整理で困らずに済みます。
最近は、余命宣告の有無にかかわらず、元気なうちから「エンディングノート」を作る方が増えてきました。エンディングノートを活用することで、いざという時の準備になり、本人の想いや考えを家族と共有できるからです。
▶作成は、無理をせずに思いつくままに
まずは、比較的体調が良い時に、患者本人とともに、思いつくままに書きとめてみましょう。家族のこと、財産のこと、医療のこと、葬儀のこと、供養のこと、身の回りのことなど、考えなければならないことはたくさんありますが、エンディングノートを完成させる必要はありません。患者本人が気がかりに思うこと、大切に思うことから話をしていき、書き留めていくだけで充分です。
▶エンディングノートには何を書くとよいか?
エンディングノートには、次のような情報を残しておきます。
- 相続・財産に関すること(通帳・印鑑の保管場所、クレジットカードなどの有無)
- 生い立ち、経歴、職歴、趣味について
- 配偶者・子・孫・兄弟姉妹など親類の氏名、住所、連絡先
- 友人・知人の氏名、住所、連絡先
- かかりつけの病院や入所している介護老人施設等の名称、住所、連絡先
- 処分してもよい家財道具など
- 葬儀社、寺院、治療法、緩和ケアなどの指定
- 家族への感謝の言葉
これらの情報は、本人が余命宣告されたり、危篤状態になったとき、また亡くなったあとのもろもろの手続きの際、家族にとって大きな助けとなります。
まとめ
余命宣告は、あくまで過去の統計データを基にした予測されたもので、実際にあとどれくらいの期間生存できるかは、誰にも分かりません。だからこそ、患者や家族がともに想いを共有しあい、後悔のない最期を迎えたいものです。何よりも患者本人にとっては、家族とともにいる時間こそが、心の大きな支えとなることでしょう。
患者本人の前で笑顔でいられるためにも、心身に無理をさせず、感情を素直に受け止めて表現し、自身のケアにも努めてもらえればと思います。
余命宣告に関するよくある質問
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